
ライト百合目的で購入。思いのほか良かったです。これ、最初は集英社から出ているのかと思っていて、りぼんマスコットコミックスの新刊のコーナーをウロウロしていましたが、小学館でした。はずかしい。
事故で両親を亡くした錦戸小朝は、いとこの笠霧ゆきなの家に暮らしています。その笠霧家はかるた道場の名門、ゆきなは最年少かるたクイーンなのです。大好きなゆきなと一緒にかるたに親しんできた小朝ですが、一向に上達しません。ところが、道場破りのためにやってきた西日本の名門・里美伊鈴との対決がきっかけになり、競技かるたにのめりこんでゆきます。ゆきなの猛特訓と、持ち前の才能もあって、めきめきと成長する小朝。ついに東日本代表にまで勝ち抜き、伊鈴との東西対決でも雪辱を遂げました。そしてとうとうクイーン戦。小朝とゆきなの対決が行われます……。
小朝の才能は、その豊かな想像力でしょう。本人いわく和歌のこえを聞くことで、ゆきなの言うところの妄想癖です。彼女は読まれた和歌の世界を、瞬時にイメージし、没入することができるのです。ニュータイプがピキーンと何かを感じ取るように。それは、とても気持ちが良い感覚で、ふと我に返った時には高揚を感じているようでした。和歌の世界を味わうことができたうれしさ、そしていつのまにかかるたを先取できていたうれしさ。そのようなものがうかがえました。
ありありと描き出された想像の世界の描写も美しく、作品に彩りを添えています。
終盤までは、天真爛漫・一所懸命な小朝が前面に押し出されていますが、クイーン戦前に、ゆきなのもどかしい気持ちが描かれています。小朝の急激な成長に、嫉妬と焦燥感を覚えていたのです。
ここからラストにかけての、「最高の親友で最高のライバルとなるための戦い」がまた良いんです。見事ライバルになりうる実力をつけた小朝に、焦りと不安を感じながら決戦を挑むゆきな。一方小朝は、もっとゆきなに甘えていたい気持ちと、ここまで成長させてくれたゆきなへの礼儀として全力で挑まなければ申し訳ない、という気持ちの葛藤に苦しみます。これは、どちらも、お互いのためを思って戦っている、綺麗なライバルの関係ではないでしょうか。いずれが勝っても良くて、損得勘定がない。
「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢わむとぞ思ふ」
最後の和歌が読まれたとき、小朝とゆきなの想うところが一つとなり、二人でイメージの世界に入ることができました。「小朝はいつもこんな世界を見てるの?」とゆきな。
「われた末に、逢う」ことができて、めでたしめでたし。
短編で、ポンポン話が進みますが、内容は充実していると思います。小坂さんはわざわざ滋賀の近江神宮まで取材に行かれたということで、気合がはいっていますし。
同時収録作品はそれぞれ、女子高・姉弟・姉妹と、ライト百合好きにも好まれそうなラインナップになっています。低年齢向けですが、どなたにもお勧めの漫画です。

